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ピロリ菌について


消化器内科部長  前川 智

最近テレビなどで話題のピロリ菌はご存じですか?

ピロリ菌の正式名称は、ヘリコバクター・ピロリ菌で、オーストラリアのロビン・ウォレンとバリー・マーシャルにより発見されました。この菌は胃に生息し、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんなどと密接な関係のあることがわかっています。この菌の発見で、彼らは2005年、ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

現在、日本人の半数程度がピロリ菌に感染しているといわれています。しかし、ピロリ菌に感染しても一部の人しか潰瘍やがんにはなりません。菌の種類と感染した人の体質により、起きてくる病態が違うからです。2013年2月より、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎全体に保険適用が可能となりました。

ピロリ菌は胃の壁を傷つけ、胃の守っている粘液を減らし、酸の攻撃を受けやすくしてしまうので、胃炎や潰瘍を発症させる要因になります。こうした胃粘膜刺激の繰り返しにより胃がんになることが言われています。ピロリ菌に感染するとほぼ100%に軽い胃炎をおこします。胃潰瘍で約90%、十二指腸潰瘍ではほぼ100%に、胃がん患者では90%以上の人がピロリ菌陽性です。1994年にはWHOがピロリ菌を胃がんの発がん因子と指定しています。胃炎は胃がんの発生母地になると考えられており、ピロリ菌感染のない人は胃がんが少ないことが疫学的に言われています。ピロリ菌除菌を行うことで胃がんになる危険性を3分の1程度にまで下げることが可能と考えられています。またピロリ菌除菌を行うことにより、胃潰瘍の再発率は6分の1に、十二腸潰瘍の再発率は12分の1になるといわれています。

ピロリ菌の感染を調べる検査には、大きく分けると胃内視鏡検査で粘膜を採って調べる方法と、胃内視鏡検査をせずに、血液や尿、呼気(吐いた息)で調べる方法があります。

ピロリ菌除菌にはプロトポンプ阻害薬(胃酸分泌を抑える薬)と抗生物質を1週間服用します。プロトポンプ阻害薬で胃酸の分泌を抑えておいてから抗生物質でピロリ菌を除菌します。

この方法による除菌率はわが国では、70〜90%と報告されています。除菌治療の成否により、治療方法が大きく変りますので、完全にピロリ菌が除菌されたかどうかを確認することが重要です。最初の除菌療法でうまくいかなかった場合は、違う薬を使って再度除菌療法を行うことができます。この方法により、さらに90%以上の方で除菌が可能であったと報告されています。その一方で除菌後にも胃がんが発見される報告もありますので、定期的に検査(胃カメラ)をしていく必要はあります。

ピロリ菌除菌を希望される方は、まずピロリ菌の有無をチェックする検査をさせて頂きますので、お申し出ください。

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