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「最期までその人らしく」を支える看護


看護師長補佐  岡村 光子

我が国の高齢化率は25%を超え、早くて10年後には、これまで経験したことのない多死社会を迎えようとしています。現在、患者さんが最期の時間を過ごす時、殆ど医療の手が携わっています。その中で、「医療がその人の最期に関わる」意味を考えながら日々の看護を実践したいと思っています。

皆さんは、「エンゼルメイク」という言葉をご存じですか?映画『おくりびと』で亡くなった人の身支度にまつわる場面を、イメージする方もいると思います。病院で行うエンゼルメイクは映画と少し異なり、(1)医療行為による侵襲や病状などによって失われた生前の面影を可能な範囲で取り戻すための「ケアの一環としての死化粧」(2)死別の悲しみへのケアの意味合いを併せ持つ行為(3)その人らしい容貌・装いに整えるケア全般と意味づけられます。エンゼルメイクは、亡くなられた後のお顔色やお身体の変化についての研究をもとに根拠のあるケアとして行われています。私たちは、それを学び実践しています。入院中患者さん・ご家族との関わりの中でその方の生きてこられた背景、不安や望みに寄り添い、最期の時間をできるだけ「その人らしく」過ごしていただく援助をしたいと考えています。「死」は「生」の延長上ともいえます。いよいよ最期の時を迎え、お看とりのあとに施すエンゼルメイクは、それまでの関わりと同様大切な看護であると考えます。患者さんにとっては闘病で頑張ってきた身体を安らかな姿にする時間となり、ご家族にはつらい状況を受け入れながら、充分に気持ちを表出していただく時間となります。私たち看護師には、これまでの関わりに感謝しその方にできる「最期の看護」をさせていただく時間となると思います。エンゼルメイクを施した後のお顔をご家族から見ていただく時「穏やかな顔になって苦しそうじゃなくてよかった。」というお言葉を多くいただきます。エンゼルメイクによって「その人らしさ」を取り戻し、ご家族が大切な人を喪ったことをうけとめ、お別れへの心の準備をすることにつながるのではないかと思います。病院を退院される時までの時間、患者さんのお顔やお身体に触れながら、ご家族が臨終された事実をゆっくりと受けいれていくための心のケアを大切にしたいと考えます。

「その人らしい」最期の時間を支える看護を追及し続け、皆様に信頼される労災病院であるよう努力をしたいと思います。

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