「年だからね」、少しお年を召した方々の会話の中でよく聞かれる言葉です。自分で自分のことを言う分にはどうということはありませんが、これがひとさまに言われると少し腹立たしいこともあるものです。同じような言葉に加齢現象や老化といった表現があります。「加齢」とは誕生からどれだけの時間が経ったかを示すもので、「老化」とは大人になって以降、加齢に伴い心身の機能が衰えていくことです。加齢と老化はイコールではありません。同じ年齢の人を見ても「老けたな」と思う人もいれば「若々しいな」と感じる人もいます。加齢は平等ですが、老化には個人差があります。
加齢に伴って運動機能の変化、感覚機能の変化、内臓機能の変化などさまざまな変化がカラダの中で起こってきます。ここでは当院のリハビリテーションと比較的かかわりの深い筋機能と感覚機能の変化についてお話します。
①筋機能の変化
一般的に筋力は20~30歳台をピークとして以後減少し、50歳台から低下の割合が高くなっていき80歳台までに約30~50%低下すると言われています。特に中高齢女性の股関節を外転させる(下肢のつけ根を横に開く)筋力の低下が確認されています。この筋力が低下すると立位歩行時に側方不安定性を招き、容易に生活活動量の減少や行動範囲の縮小に結びついてしまいます。以前は握力が全身的筋力の指標として用いられていましたが76歳未満の高齢者では日常生活の困難発生の有意な因子ではないと言う報告もあります。加齢による筋力の低下は上肢筋より下肢筋で大きいことから膝を伸ばす筋力の方が高齢者の生活活動機能に反映していることが示唆されています。また高齢者では素早く筋力を発揮することが困難となり外力を受けた時の姿勢制御の低下となり転倒しやすくなってしまう一因のようです。
②感覚機能の変化
感覚と言えば視覚、聴覚、味覚がすぐに浮かびますが、そのほかに体性感覚と平衡感覚が挙げられます。体性感覚の中でも身体の機械的変位や圧変化を感知する触覚、圧覚、振動覚、運動覚やバランスを取るために重要な平衡感覚が身体活動に大きく関わってきます。
目で確認しなくても自分の手足が曲がっているか伸びているかがわかるのは運動覚の働きです。これらの機能が低下してくると体の動きに対して姿勢制御が正確に反応できず対応が遅れた結果、転倒などの事例に結びついてしまいます。
また、加齢によりカラダだけでなくココロにも変化が起こってきます。ココロの変化では高齢者の約15%にうつ症状が見られ積極的に行動を起こそうとする気持ち(意欲)の低下につながり、また転倒への恐怖を有する高齢者では活動量の低下から生活範囲の狭小化に影響され要介助発生リスクが高まるとことが懸念されます。
今まで何気なくしていた日常活動の中で「少しやりにくいなあ」、「するのがおっくうだなあ」と感じることがあれば老化のはじまりかも知れません。明日は当たりまえに来るのではなくそんな変化に気づけることが大切です。変化していく自分と上手に付き合っていくことが重要です。積極的にアンチエイジングに取り組むも良し、今の生活を大事に続けていくも良し。それはあなたの考え方次第です。
加齢による身体機能の変化は栄養状態にも深く影響されます。気になる方は当院のフレイル予防健診をご利用下さい。
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