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献血と血液製剤のはなし


臨床検査技師  神林 泰浩

皆さんは、ショッピングセンターや企業、学校などにやってくる献血バスや献血ルームなどで献血を行ったことがあるでしょうか?献血をすると飲み物やお菓子、粗品が貰えたりする!といった印象が強いですが、今回は献血で得られた血液が血液製剤となる行程と、どのような方に使用されるのかについて書きたいと思います。

〔製造工程について〕
献血で得られた血液は様々な検査と製造工程を経て、血液製剤となり輸血を必要とする患者様に投与されます。
① 初流血除去
注射針を刺したときに皮膚についている細菌がバッグ内に混入することの防止と初流血を用いて各種検査(生化学検査、ヘモグロビンの濃さ、感染症検査など)を行うために実施されます。
② 採血バッグへの貯血
初流血除去された血液は採血バッグに貯められて製剤の製造工場に送られます。
③ 白血球除去
白血球除去フィルタを通過し、白血球の大部分が除去されます。白血球が原因となる輸血副作用の発生防止の為に行われ、白血球が除去された血液は赤血球用バッグに流れこみます。
④ 遠心分離
血液が貯まった赤血球用バッグを遠心分離することで赤血球と血漿に分離され、血漿のみを血漿用バッグに移します。

こうして、赤血球用バッグ、血漿用バッグに採取された血液がそれぞれ赤血球製剤、血漿製剤として製造されます。

全血献血の他にも、目的の成分(血漿、血小板)のみを採血し、献血前の状態に戻るのに時間のかかる赤血球を献血者の体内に返還し負担を少なくする成分献血という方法も実施されています。

〔血液製剤の使用について〕
赤血球製剤や血漿製剤、血小板製剤はそれぞれ働きの異なる成分のため、患者様の症状や病態によって使い分けられています。
【赤血球製剤】
出血や貧血の急速な補正が必要な方に使用され、からだ中の酸素の供給の改善に役立ちます。
【血漿製剤】
出血などにより減少した血漿成分の補充、特に血漿中に含まれる凝固因子(血液を固める作用がある物質)の補充に役立ちます。
【血小板製剤】
血小板の減少や機能異常により重篤な出血や出血が予想される際に使用され、出血を止めることに役立ちます。

近年、IPS細胞などを用いた人工血液の研究が進んでおり実用化が期待されていますが、一般的な医療機関で日常的に使えるようになるにはもう少し時間がかかりそうです。その為、輸血を必要とする患者様に使用する血液製剤の確保には皆様の善意の献血が必要不可欠となります。献血バスや献血ルームを見かけたら、気軽に献血を行ってみてはいかがでしょうか。
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