肘内障とは、5歳以下の子供に多く見られる肘の亜脱臼です。「手をつないでいて、転びそうになった子供の腕を引っ張った。」、「転んで手をついたり、腕を捻ったりした。」、「雲梯などにぶら下がって遊んでいた。」状況は他にもありますが、肘内障はこのような状況で起こりやすいです。
肘から先は細い骨と太い骨が並んでいます。太い骨から出て細い骨に巻き付いている靭帯(輪状靭帯)、これが細い骨から外れかける(亜脱臼する)ことで肘内障は起きます。
肘内障の痛みは相当強いもので、ほぼ全ての子供が激しく泣き出します。さらには腕を上げない、誰にも触らせない、だらんとしたまま動かさなくなる、というのが典型的な症状です。
肘内障に対しての治療は徒手整復です。外れかけている関節の箇所を指で触れながら、手のひらを下向き(回内)、または上向き(回外)にすることで整復し、関節がはまった感触を確かめます。整復はほぼ一瞬で終わりますが、その際は痛みを伴うため、整復後も泣き続ける子供は多くいらっしゃいます。5分~10分様子を見ているうちに、泣き止んで腕を上げ始めるようになり、元通り動くようになってくれば、整復成功です。
特に医療器具が必要でもなく、短時間で済む整復ですが、それを行う前には、「骨折」という疾患を除外しておくのが、非常に大切です。私が今までに診てきた肘内障の中には、お父さん、お母さんのお話を聞く限り、骨折も考えられるような受傷起点の子供もいらっしゃいました。骨折と肘内障で最も見分けやすい点は腫脹の有無です。肘内障はほとんど腫れませんが、骨折の場合は骨や周りの組織からの出血により高確率で腫脹が認められます。その様な状況で肘の曲げ伸ばしなどの整復操作を行ってしまうと、腫れを助長し麻痺や血行障害をも起こしうる可能性があるので、絶対に行ってはいけません。
お子さんが何らかの受傷起点をきっかけに肘または腕のどこかを激しく痛がっていた際は、整形外科を受診し、必要に応じてレントゲン検査をしてもらいましょう。
一度肘内障を起こしてしまうと、その後も繰り返しやすくなってしまうことがあります。予防としては、日常生活において、肘を伸ばし切った状態で引っ張らないように注意することです。年齢を重ね、靭帯や骨が成長していけば、起きなくなるものなので心配はいりません。 |