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麻酔器とは


臨床工学技士  大島 慎太郎

麻酔器は簡単に言うと麻酔薬を流す装置に人工呼吸機能を兼ね備えた装置と言ったところでしょうか。麻酔器には必ず麻酔薬が搭載されており、一般的に頻用されているのは、セボフルランやデスフルランと呼ばれる麻酔薬です。これらの麻酔薬を気化した状態で呼吸回路へ流します。そのため、麻酔器には「気化器」と呼ばれる、液体の麻酔薬を気化する装置が必ず搭載されており、気化された麻酔薬を人工呼吸器回路に流します。気化された麻酔薬に加え、人工呼吸器同様に設定したガス(空気・酸素・笑気)を患者に流す仕組みが、麻酔器の主な機能となっています。手術中の呼吸管理をする上で必要不可欠である麻酔器。そんな麻酔器の仕組みを簡単に説明します。

麻酔回路にはいくつかの種類がありますが、基本的な回路は人工呼吸器回路と同様です。患者さんの口元に気化した麻酔薬が含有したガスを送り込みます。基本的には人工呼吸器の動力を利用して吸気に麻酔ガスを送り込み、患者から吐き出された呼気ガスが呼吸回路内に戻り、専用の余剰ガス排気システムにて吸引・破棄されます。

また最近では、患者から吐き出された呼気ガスを再利用し、必要最小限の麻酔薬の投与で麻酔をかけられる「低流量麻酔」が現在の主流となっています。この低流量麻酔は、患者から吐き出された呼気ガスを再利用することで、患者に投与する麻酔ガスが回路内を循環している仕組みになります。

しかし、患者から吐き出された呼気ガスにはCO₂が多く含まれているためガスを再利用するにもCO₂を除去しないと、患者さんが再度CO₂を吸い込んでしまうことになります。そのため、呼気中に含まれるCO₂を吸着する素材である「ソーダライム」を呼吸回路内に設置し、強制的にCO₂を取り除くシステムが麻酔器には搭載されています。

ソーダライムが入った装置に呼気ガスを流すことでCO₂を除去したガスが生成されます。しかもこのソーダライムはCO₂のみを吸着するので、呼気ガス中に含まれた麻酔ガスは残ったままとなります。そのため、新たに投与すべき気化麻酔薬の量を減らすことができるのです。

麻酔薬は劇薬指定されており、決して人体に良い薬ではありません。そのため、可能な限り必要最低限の量で麻酔ができれば、患者さんに悪影響を及ぼすリスクも少なくなります。

このように麻酔器は多くの装置が組み合わさって構成されています。麻酔器を使用するのは、麻酔科医師ですが、使用する前に点検を行っているのは、私たち臨床工学技士の業務になります。これからも麻酔科医師が安心して麻酔器が使用できるように、また患者さんが安心して手術を受けられるように、私たち臨床工学技士は責任を持って麻酔器の点検を行っていきます。
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