「過活動膀胱」とか「過活動膀胱症候群」という言葉を目にしたり、聞かれたことのある方は多いと思います。中高年の女性に見られることが多いようですが、排尿回数が増えたとか、排尿したばかりなのに、すっきり出た感じがしないとか、すぐにトイレに行きたくなり我慢できないとか、時には尿失禁してしまうなどの症状が見られるものです。
一時期は多くの新しい治療薬が開発されて、製薬メーカーが「過活動膀胱」の啓発活動を進めたこともあり、先に挙げたような症状を訴えて、掛かりつけ医を受診して、投薬が始まることも多いと思います。
しかしながら、「過活動膀胱」や「過活動膀胱症候群」の診断基準自体があいまいであり、なかなか掛かりつけ医も相談は受けて治療を始めたものの、症状が一向に良くならず治療に苦慮されることも多々あると思います。当科の外来には掛かりつけ医から投薬を受けても、症状が良くならずに続くとのことで受診することになります。
当科外来ではまずは話をよく聞いてから、尿検査や血液検査に加えて、エコーで残尿の有無を調べて、場合によっては内視鏡検査やレントゲン検査も行って、重大な疾患がないかを調べます。これによって、さまざまな症状の原因となるような疾患が明らかでない場合には、加齢による機能的異常による症状の発現と考えて、まずは内服薬による治療は行わず、「骨盤底筋訓練」を行ってもらうことにしています。内服薬の中には残尿量が増えてしまうものもあり、むしろ症状を悪化させてしまったり、さらには高齢者には認知機能に影響を及ぼしたりと、注意が必要だと考えています。
巴ひかる先生が監修されている排尿障害の小冊子の中から、骨盤底筋訓練について紹介させていただきます。これは主に中高年の女性に勧める体操で、肛門と膣を意識して締めるものです。参考にしてみてください。
 
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