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胃・十二指腸潰瘍

症状

代表的なものは「みぞおちの痛み」です。鈍い痛み、焼け付くような鋭い痛み、などいろいろあります。痛みの程度と潰瘍の重症度は必ずしも一致しません。

また、潰瘍の傷の部分から出血しているときは吐血・タール便(黒色便)なども見られることがあります。それから、胸焼け・すっぱいゲップなどの「過酸症状」もあげられます。他にも、吐き気、嘔吐、食欲不振、貧血などが症状に出ることもあります。

攻撃と防御 勢力のバランス

胃や十二指腸では「攻撃因子と防御因子」の「てんびん」のようなバランス関係があり、このバランスが崩れると潰瘍ができるといわれています。

以前は「胃酸の出過ぎ」が潰瘍の原因と考えられていましたが、最近は他にもいろいろな原因があると考えられています。その中でも近年ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)という細菌が潰瘍の原因のひとつとして特に注目されています。

胃炎と胃潰瘍の違い

胃炎(胃の炎症)の原因のほとんどはピロリ菌であるといわれています。
ピロリ菌による胃炎では、その部位に白血球という細胞が集まってきているので、炎症がおきているかどうかは白血球の集まり方を見れば分かります。

胃の粘膜が削れた場合を「びらん」や「潰瘍」といい、ピロリ菌による胃炎があるときに特におこりやすいと考えられています。

ヘリコバクター・ピロリ
これがヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)です。ピロリ菌は人間の胃の中に住んでいる細菌です。1980年代に発見されましたが、この菌が胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因となっているということが、近年明らかになってきています。長さは4ミクロン(4/1000mm)で、2~3回ゆるやかに右巻きにねじれています。片側(両側の場合もあります)に4~8本のべん毛がはえています。

ピロリ菌は胃の粘膜を好んで住みつき、粘液の下にもぐりこんで胃酸から逃れています。また、十二指腸の粘膜が胃と同じような粘膜に置き換わってしまった場所(胃酸から十二指腸を守るためにこのような変化をする場合があります)では、ピロリ菌が住みつくこともあります。

胃潰瘍と十二指腸潰瘍の違い

この二つの病気は、できる場所が違うだけでなく、他にもいろんな違いがあることが知られています。胃潰瘍のできやすい部分は胃角部付近です。十二指腸潰瘍は十二指腸球部というところにできやすいとされています。

欧米では十二指腸潰瘍が多く、日本では胃潰瘍が主流ですが、生活の欧米化に伴って、日本でも十二指腸潰瘍が増えてきているようです。しかしなぜこのような差が出るのかについてはよく分かっていません。

また、できやすい年代もちがいます。胃潰瘍は40~50歳代、十二指腸潰瘍は20~40歳代で患者さんが多くなっています。

最近では、ピロリ菌の胃内での感染分布の様子によって胃潰瘍・十二指腸潰瘍のどちらになりやすいかが分かる、とも言われています。胃全体に感染していれば胃潰瘍、胃の出口付近(幽門部)・十二指腸球部に集中していれば十二指腸潰瘍になりやすいと言われています。

治療

胃酸抑制剤(PPI, H2-blocher)の投与によりほとんどの潰瘍は治癒します。潰瘍から出血している場合は、随時内視鏡的止血術を行います。

潰瘍の再発予防のため、ピロリ菌の除菌治療を積極的に行っています。