放射線治療科
診療科の特色(専門分野等)

当科では、肺がん、食道がん、前立腺がんなど様々な悪性腫瘍に対する放射線治療を各科と協力して行っています。呼吸同期撮影が可能な治療計画CT・三次元治療計画装置を用いる事により、放射線による副作用が小さい放射線治療が可能となっています。
放射線治療とは
放射線治療は手術・抗がん剤と並んでがん治療の三本柱の一つであり、近年の治療技術の飛躍的進歩によりその役割は増加の一途を辿っています。単独で、または他の治療法と組み合わせて用いられます。
放射線治療の特長は、
(1) 病変部を切り取らないで治療するため、機能・形態を温存できること。
(2) 手術や抗がん剤に比べて全身の負担が少ないため、合併症のある患者さんや高齢の患者さんにも安全に治療できること。
などです。また放射線治療は早期がんの治療から緩和医療まで、がん治療の全ての段階に適用できる治療法です。
当院の放射線治療の特長
当院では治療計画用CT、三次元治療計画装置、並びに放射線治療装置(リニアック)が密接に連携したシステムを用いており、効率的でしかも精度の高い放射線治療が可能です。
主な機器構成
- 高エネルギー医療用リニアック:米国Varian 社製、CLINAC-21EX(多分割コリメータ60 対120 枚)
- 三次元治療計画装置:CMS 社製、XiO
- 治療計画専用マルチスライスCT:米国GE 社製Bright Speed Excel(4列)
- 専用CRシステム:富士フィルム社製、XL-2システム

多分割コリメータ
(60対120枚)

体幹部定位照射の固定
放射線治療開始までの流れ
- 放射線科医の診察 照射方法・照射予定の説明
- 固定具の作成 CT撮影
- CTデータの解析 照射方法の検討
- 照射野の決定 確認レントゲンの撮影
- 治療開始
診察から治療開始までにかかる時間(日数)は放射線治療の方法によって異なります。

頭頸部照射の場合の固定具
当院で行っている放射線治療方法の比較
照射法 | 特長 | 短所 | 適応疾患 |
---|---|---|---|
標準放射線治療 | 広範囲の治療が可能 治療計画に時間がかからない 治療時間が短い |
がんの周辺にある正常組織も照射される 照射できる線量に制限がある |
進行肺がん、食道がん、頭頸部がん、乳がん、転移性骨腫瘍など |
三次元原体照射法(3D-CRT法) | がんの形状に合わせた照射が可能 がん周辺の重要臓器の被ばくを遮蔽できる 治療時間が短い |
回転ブロック近傍では線量が不均一になる 複雑な形状は再現できない |
脳腫瘍、頭頸部がん、肺がん、膵臓がん、前立腺がん、直腸がんなど、部位を問わず適応となる |
定位放射線治療(体幹部) | 手術と同程度の治療成績が得られ、手術より全身への影響が少ない 高齢者や合併症のある患者さんも治療できる 後遺症が少ない 治療期間が短い(1週間以内) |
3cm以上の腫瘍や多発性腫瘍は治療困難 精密な治療のため患者さんの体動を抑制する必要がある 1回の治療時間が長い(約1時間) |
早期肺がん(Ⅰ期) 他部位に転移のない転移性肺がん |

前立腺がんに対する三次元原体照射の線量分布図

肺がんに対する定位照射の線量分布図
アイソトープ(ストロンチウム)による骨転移疼痛緩和療法
放射性同位元素(アイソトープ)であるストロンチウム89を静脈注射する放射線治療です。ストロンチウムは骨の成分であるカルシウムと同じように骨に集まりやすく、骨転移部には正常の骨よりも長くとどまるために、その間にストロンチウムから放出される放射線によって痛みが和らぎます。
骨転移の病変が1カ所であれば、標準放射線治療でも対応できますが、多発性の骨転移による疼痛を緩和するにはストロンチウムによる放射線治療が有効です。
緩和医療
放射線治療は、がんの増大・転移による痛みやむくみ、呼吸困難、嚥下障害など様々の不快な症状の緩和にも有用です。当院には「緩和ケアチーム」があり、放射線治療医もチームの一員として活動しています。
放射線だけで改善しない症状は、毎週1回開催される「緩和ケア委員会」で検討しながら、様々な鎮痛剤や鎮痛補助剤を組み合わせて、症状の改善を図ります。
がんによる不快な症状でお困りの患者さんは遠慮なくご相談ください。
(相談窓口:新潟労災病院放射線治療科受付 電話 025-543-3123 内線 1700)